filing for ~ and filing past ~

皆さん、こんにちは。早いものでもう8月の最終日になりました。今年の夏はいかかでしたか。
今回はBuildup Reading&Listeningコースで今期取り上げたリスニング題材の中から2つばかりご紹介しましょう。

まず一つ目を聴いて[    ]を埋めてください。

Yesterday Motor City became the largest municipality in U.S. history to [   A   ]. Its debt is estimated to be more than $18 billion. Michigan Governor Rick Snyder says the city has not been meeting its basic obligations and [   B   ] is a way to change that.
「昨日、自動車産業の都が、アメリカ史上最大の連邦破産保護申請自治体となりました。負債は推定180億以上になります。ミシガン州のリック・スナイダー知事は、デトロイト州はこれまで基本的な責務は果たしておらず、破産申請はそれを変える方法であると述べています。」

detroit7月にアメリカのデトロイト市が破産したというニュースですが、Motor Cityというのは自動車産業で有名なデトロイトの別名です。答えはA: file for federal bankruptcy protection / B: filing for bankruptcyとなります。file for ~は「~を申請する」、file for bankruptcyで「破産申請をする」という意味です。ここでのfederal bankruptcy protectionは具体的にはChapter 9 「連邦破産法第9条」の適用申請のことで、これは自治体が破産処理をする場合に使われます。ちなみに、民間企業などの場合はChapter 11を申請します。普段はこちらのfile for Chapter 11 bankruptcy protectionのほうをよく目にします。負債は180億ドル(約1.8兆円)ですから相当なものです。あのデトロイトが破産?と驚かれた方も多かったでしょう。

それでは次に2つ目を聴いてください。再びfileが使われています。

The bells of Westminster Abbey were ringing out across central London today in celebration of the royal baby. There was also a 62-gun salute at the Tower of London. Prince William and his wife Katherine gave birth to the baby prince yesterday. Outside Buckingham Palace, people continued to [        ] that displays the birth announcement.
「ロイヤルベビーの誕生を祝い今日ウェストミンスター寺院の鐘がロンドン中心部に鳴り響きました。ロンドン塔では62発の祝砲も打ち上げられました。昨日、ウイリアム王子とキャサリン妃の間に王子が誕生しました。バッキンガム宮殿の外では、誕生の告知を掲示したイーゼルの前を引き続き多くの人が通り過ぎました。」

royal baby英国王室で王子が誕生したニュースは日本でも大きく取り上げられました。[      ]の中は聴き取れましたか。file past the easelと言っていますが、意味はつかめたでしょうか。ここでのfileは前に出てきたものとは違って、「一列で進む」という意味で、file past ~ は「一列になって~を通り過ぎる」です。easelは「画架」のことですが、この上に王子の誕生を知らせる告知書を載せてバッキンガム宮殿の前庭に置かれ(左の写真)、たくさんの人がそれを見に集まった光景を述べています。テレビで何度も放映されたので、ああ、あれか、と思い出された方も多いでしょう。

この2つのニュースはたまたま同一レッスンで使用したものです。一つは消滅、一つは誕生と、時の移り変わりを感じさせる例でした。

それでは、また次回お目にかかりましょう。

文法が分かるとはどういうこと?

145251(1)皆さんこんにちは。夏真っ盛りですが、いかがお過ごしですか。
今回は英語の文法についてお話ししたいと思います。

英語が分かるには単語と共に英語の構造、いわゆる文法が頭に入っている必要がありますが、文法というとどんなイメージをお持ちですか?

関係代名詞、分詞構文、不定詞等々、文法用語が頭に浮かんできそうですが、しかし、こうした文法用語を通して英語の構造を理解することが果たして文法が分かるということでしょうか?

次の文を見てください。
I like apples.

この文を、Iが主語で、likeが他動詞、applesがlikeの目的語で、applesはappleの複数云々、と解析して意味を取る人はまずいないでしょう。そんなことをしなくてもすぐに意味が取れるはずです。

次の文はどうでしょうか。
When I was born, I weighed 3 kilos.

最初の文より少し複雑になりますが、それでもwhen I was bornが従属節などといちいち考えなくても、「生まれた時、体重が3,000グラムだった」という意味は分かるでしょう。

この2つの文の意味がすぐに分かるということは、そこで使われている文構造が
しっかり頭の中に入っていることを示しています。これが文法が分かっているということです。たとえ文法用語を知らなくても、意味が正確に取れるということは文法が分かっているのです。

逆に、文法用語を使ってある文を理解しても、そこで使われている構造が本当に分かったとは必ずしも言えません。

次の文のofに注目してください。

“He was a Russian immigrant,” Jeffrey said of Morris Cohen.
(「彼はロシア系移民でした」とジェフリーはモリス・コーエンについて語った。)

このofは「~について」という意味でHeはMorris Cohenのことです。

それでは、以下の文を見てください。

“You can’t govern with bans,” said Angelo Bonelli, a member of Italy’s Green Party, of Mayor Alemanno.

同じof「~について」が使われていることにすぐに気づきましたか?
Angelo Bonelliはa member of Italy’s Green Partyで、彼がMayor Alemannoについて“You can’t govern with bans,”と述べた、という構図になります。Alemanno市長は禁止によって市を統治しようとしているわけです。
(「禁止で統治はできません。」とイタリア緑の党員Angelo BonelliはAlemanno市長について述べた。)

この文のofがすぐに見抜けなかったら、of「~について」の使い方は知っていても、実際には頭に定着していないということになります。読んですぐに正確に理解できることが文法が分かっているということです。

それでは、様々な文構造を頭に定着させるにはどうしたらよいのでしょうか?
答えはその構造を持つ文に数多く触れることです。文構造が複雑な場合、最初は文法用語を使って文を理解するのは全く構いませんが、それで終わらずに、同じ構造を持つ文に繰り返し触れることが必要です。

その際に注意していただきたいのは、同じ文を繰り返しても効果はあまりないということです。覚えているからです。上記のofの例の様に、同じ構造を持つ文を違った状況で触れること、これが非常に重要です。

最初一人では、同じ構造に触れていることに気付かないなど、難しい場合もあるかもしれません。そういう方にはちょっと手前味噌になりますが、当校にBuildupというコースがあります。ここで、こうした繰り返し学習をしていますので、興味のある方は覗いてみてください。1回無料で授業を見ることができます。160822(1)

それでは、良い夏をお過ごしください。またお目にかかりましょう。

He or She or They?

皆さん、こんにちは。お元気ですか。
今日は名詞の単数・複数について少しお話したいと思います。まず下の文を見てください。

19ILBI05If a patient doesn’t receive enough anesthesia, they may experience anesthesia awareness, a situation in which they become conscious during surgery.
(患者が十分な麻酔を受けないと、術中覚醒という手術中に意識が戻る状態になる可能性がある。)

theyはa patientのことですが、単数のa patientをなぜ複数のtheyで受けるのかと思われる方もいるでしょう。ひょっとしてこの文は間違っているのでしょうか。

一般に単数は単数で受けます。それに従えば、この例文だと以下の言い方が考えられます。
(1) If a patient doesn’t receive enough anesthesia, he may experience may experience …
(2) If a patient doesn’t receive enough anesthesia, she may experience may experience …
(3) If a patient doesn’t receive enough anesthesia, he or she may experience may experience …

(1)のように伝統文法的にheで受けるとsexism in language (言語における性差別)、(2)のようにわざとらしくsheで受けるとlinguistic equivalent of affirmative action(言語版差別是正措置)と取られる傾向があります。

こうした問題を回避するため(3)のようにhe or sheがよく使われてきました。

しかし、he o19ILBI03r sheというのは堅い感じがするため、今では性別を明示しないtheyが多く見られるようになっています。従って冒頭の文は正しい文なのです。

こうしたtheyの使い方はsingular theyと呼ばれています。英語では女性と男性の両方を表す単数代名詞がありませんから、単数名詞が男性か女性か分からない場合、あるいはどちらでも指す場合theyで受けようということです。

すでに一般の文法書の中にはanybody/anyone, somebody / someone, nobody / no one, each ~, every ~, either ~, neither ~, no ~, personの場合theyで受けることがよくあると明記しているものもあります。

以下はpersonの例です。
Studies have shown that when a person is recuperating from an illness, they tend to recover more quickly when they have a pet to care for.
(病気の回復中に世話をするペットがいると回復が早まる傾向があることを研究は示している。)

単数・複数の問題を解決する手っ取り早い方法は、初めから複数名詞を使う(If patients don’t receive …, they may experience …)ことがありますが、常にそうできるとは限りません。そのうち性別を表さない単数代名詞が出てくるかもしれませんね。

それではまたお目にかかりましょう。

速読、速読、本当に必要?

皆さん、こんにちは。お久しぶりです。関東地方は梅雨に入りましたが、いかがお過ごしですか。

今日は速読について少しお話したいと思います。

生徒さんからよく受ける質問の一つに、どうしたら英語を速く読めるようになるか、というのがあります。特に英語の試験を受ける方の中に、時間内に解答できるように速読の練習をしなくてはと思っている方が結構いらっしゃいます。

速く読むことができれば、それだけ短時間に多くの情報が得られるわけですから、早く読めるに越したことはないでしょう。しかし、日本で行われている英語の試験対策のためにわざわざ速読の訓練が本当に必要でしょうか?

例えば英検1級という試験があります。日本では合格が難しいとされている試験の一つですが、1次試験を解答時間内に終わらせるためにはどれくらいのスピードで読む必要があるでしょうか。

大体1分間に150~160語くらいです。これは速読というほどのスピードではありません。少なくとも分速300語以上で読むなら速読の部類に入るでしょうが。

とは言っても、英語を母国語としない平均的日本人英語学習者で分速150〜160語で読める人はそれほど多くないでしょう。

従って、速読、速読という前に、まずこのスピードで読めるようになることが必要だと思います。そのためにはどうするか。音声を利用することです。まず、[A]を聴いてみてください。

image[A] Listen

スクリプトは以下の通りです。
And Angelina Jolie has lost another close relative to cancer. Just two weeks ago, the Oscar Award-winning actress announced she had a double mastectomy to reduce her risk of breast cancer. Now, her aunt Debbie Martin has died from the disease. Jolie’s mom died of cancer in 2007. All three reportedly carried the same faulty BRCA gene.
(アンジェリーナ・ジョリーさんはまた近親者をがんで失いました。わずか2週間前、アカデミー賞受賞女優のジョリーさんは乳がんのリスクを減らすため両乳腺を切除したと発表しました。今度は、彼女の叔母デビー・マーティンさんが乳癌で亡くなりました。ジョリーさんのお母さんは2007年にがんで亡くなっています。3人は皆同じBRCAの変異遺伝子を持っていたとされています。)

これはアメリカの放送局のニュースですが、どれくらい聞き取れましたか。1分間で155語のスピードです。これが普通に聞き取れれば、このスピードで英文を理解できるということです。つまり、このスピードで読めるということになります。

次に、[B]を聴いてみましょう。

image[B] Listen

これはカナダの放送局のニュースです。スピードは少し早く1分間で180語です。分速180語で読めればほとんどの日本人は十分でしょう。

Israel’s defense minister has issued a stern warning related to plans by Russia to deliver a state-of-the-art anti-aircraft missile system to the Syrian government. Moshe Yaalon says the system has not yet arrived in Syria, but he says Israel will know what to do if it is delivered. Moscow says the deal could deter a foreign military intervention in Syria.
(イスラエルの国防相は、ロシアがシリア政府に最新鋭の対空ミサイルシステムを供給する計画について厳しく警告しました。モシェ・ヤアロン国防相は同システムはまだシリアに届いていないと述べていますが、もし供給されればイスラエルはどう対処するか分かるだろうと語っています。ロシア政府はこの取引で外国によるシリアへの軍事介入を抑止できるだろうと言っています。)

音声は一瞬にして消えてしまいますので、日本語に訳す時間はありません。否応なしに頭が英語で理解する方向へと向かいます。英語の理解に日本語が関わればそれだけ理解に時間がかかります。逆に日本語の介入が少なくなればそれだけ速く意味を掴めることになり、今までより速く読めるようになるのです。

また、話者は辞書の発音のようにすべての単語をひとつひとつはっきり発音するわけではありません。意味や構造のひとかたまりを単位に自分の言っていることを意味を取りながら喋っています。その話者の発話リズムに慣れれば、読む場合もそのリズムで理解できるようになります。

そのためには、音声をただ聞くだけでなく自分で発音してみることが大事です。自分で音を再生できる程度の長さで一旦止め発音してみます。そしてまた音声を流し適当なところで止めて発音します。それを繰り返すのです。そうしながら再生できる長さを徐々に長くしていきます。最初はスクリプトを見ながらでも良いですが、徐々に文字を外して音だけに頼るようにしましょう。そうすることで、次第にリズム感が頭に定着し、そのリズム感で読めるようになってきます。

英語圏でのニュース放送の多くはインターネットで視聴することができます。そうした放送は(会話などを除けば)大体分速150 ~ 180語くらいで話されているのが一般的です。読む速度を上げるには文字だけではなくこうした音声も利用すると良いでしょう。役に立つはずです。

それでは、またお会いしましょう。

“Apparently” is “arguably” one of the most confusing words for Japanese English learners …

皆さん、こんにちは。早いものでもう3月ですね。いかがお過ごしでしょうか。今回は表題にある”apparently”と”arguably”の使い方についてお話します。どちらも結構目にする単語です。

apparentlyは英和辞書を引くと、「明らかに」、「見たところ〜のようだ、〜らしい」の2つの意味が載っています。どちらの意味で用いられているか悩んだことがある方は結構いらっしゃると思います。果たしてどちらの意味で使われることが多いでしょうか。

まず、以下の例文を見てください。

North Korea apparently conducted a widely anticipated nuclear test Tuesday, strongly indicated by an “explosion-like” earthquake that monitoring agencies around the globe said appeared to be unnatural.
There was no confirmation from Pyongyang that it had conducted a test, which it has been threatening for weeks.
(北朝鮮は火曜日広く予想されていた核実験を実施したと見られ、世界中の監視機関が不自然に思えると言う爆発のような地震がその可能性を強く示唆した。北朝鮮は実験を行ったと発表していないが、ここ数週間実施するとしていた。)

これは、先月の北朝鮮による核実験についての初期段階でのAP電です。北朝鮮は核実験を実施したとは言っていないが、不自然な地震が検出されたことから、実験を行ったようだ、ということですので、 apparentlyは「〜のようだ、〜らしい」の意味で使われています。

20130308-232228.jpgこのように、現在一般に使われている英語では、まず後者の意味、「〜のようだ、〜らしい」で用いられるようです。最近の学習英英辞典の中には、この意味だけしか載せていないものもあります。以下は、Longman Dictionary of Contemporary Englishの定義です。「明らかに」という定義はありません。

1. [sentence verb] used to say that you have heard that something is true, although you are not completely sure about it
2. according to the way someone looks or a situation appears, although you cannot be sure

次はarguablyです。これもよく見かける単語ですが、どのように用いられるでしょうか。以下は、ベネズエラのウゴ・チャベス大統領の死亡に関する記事です。

Venezuelan President Hugo Chavez died Tuesday after a long battle with cancer. He inherited a country with arguably the largest division in Latin America between rich and poor. He leaves it with virtually zero illiteracy and greatly reduced infant mortality.
(ベネズエラのウゴ ・チャベス大統領は長いガンとの戦いの末火曜日に死去した。大統領はラテンアメリカの中でおそらく最も貧富の差の激しい国を引き継いだ。彼は文盲率を事実上ゼロにし、幼児死亡率を大幅に下げてこの国を去る。)

20130308-232228.jpgこの例文からも分かるように、arguablyは「おそらく、ほぼ間違いなく」という意味で使われています。ある英英辞書では次のように定義されています。

used to say that a statement is very possibly true even if it is not certainly true

ところで、例文中のleaveにも注意しましょう。新聞の死亡記事でよく見かけますが、死んだ後に残された人や残したものを表す時に使われます。例えば、He leaves a wife and two childrenなら、妻と二人の子供を残して死ぬ、となります。He is survived by a wife and two childrenという言い方もあります。

それでは、またお目にかかりましょう。