速読、速読、本当に必要?

皆さん、こんにちは。お久しぶりです。関東地方は梅雨に入りましたが、いかがお過ごしですか。

今日は速読について少しお話したいと思います。

生徒さんからよく受ける質問の一つに、どうしたら英語を速く読めるようになるか、というのがあります。特に英語の試験を受ける方の中に、時間内に解答できるように速読の練習をしなくてはと思っている方が結構いらっしゃいます。

速く読むことができれば、それだけ短時間に多くの情報が得られるわけですから、早く読めるに越したことはないでしょう。しかし、日本で行われている英語の試験対策のためにわざわざ速読の訓練が本当に必要でしょうか?

例えば英検1級という試験があります。日本では合格が難しいとされている試験の一つですが、1次試験を解答時間内に終わらせるためにはどれくらいのスピードで読む必要があるでしょうか。

大体1分間に150~160語くらいです。これは速読というほどのスピードではありません。少なくとも分速300語以上で読むなら速読の部類に入るでしょうが。

とは言っても、英語を母国語としない平均的日本人英語学習者で分速150〜160語で読める人はそれほど多くないでしょう。

従って、速読、速読という前に、まずこのスピードで読めるようになることが必要だと思います。そのためにはどうするか。音声を利用することです。まず、[A]を聴いてみてください。

image[A] Listen

スクリプトは以下の通りです。
And Angelina Jolie has lost another close relative to cancer. Just two weeks ago, the Oscar Award-winning actress announced she had a double mastectomy to reduce her risk of breast cancer. Now, her aunt Debbie Martin has died from the disease. Jolie’s mom died of cancer in 2007. All three reportedly carried the same faulty BRCA gene.
(アンジェリーナ・ジョリーさんはまた近親者をがんで失いました。わずか2週間前、アカデミー賞受賞女優のジョリーさんは乳がんのリスクを減らすため両乳腺を切除したと発表しました。今度は、彼女の叔母デビー・マーティンさんが乳癌で亡くなりました。ジョリーさんのお母さんは2007年にがんで亡くなっています。3人は皆同じBRCAの変異遺伝子を持っていたとされています。)

これはアメリカの放送局のニュースですが、どれくらい聞き取れましたか。1分間で155語のスピードです。これが普通に聞き取れれば、このスピードで英文を理解できるということです。つまり、このスピードで読めるということになります。

次に、[B]を聴いてみましょう。

image[B] Listen

これはカナダの放送局のニュースです。スピードは少し早く1分間で180語です。分速180語で読めればほとんどの日本人は十分でしょう。

Israel’s defense minister has issued a stern warning related to plans by Russia to deliver a state-of-the-art anti-aircraft missile system to the Syrian government. Moshe Yaalon says the system has not yet arrived in Syria, but he says Israel will know what to do if it is delivered. Moscow says the deal could deter a foreign military intervention in Syria.
(イスラエルの国防相は、ロシアがシリア政府に最新鋭の対空ミサイルシステムを供給する計画について厳しく警告しました。モシェ・ヤアロン国防相は同システムはまだシリアに届いていないと述べていますが、もし供給されればイスラエルはどう対処するか分かるだろうと語っています。ロシア政府はこの取引で外国によるシリアへの軍事介入を抑止できるだろうと言っています。)

音声は一瞬にして消えてしまいますので、日本語に訳す時間はありません。否応なしに頭が英語で理解する方向へと向かいます。英語の理解に日本語が関わればそれだけ理解に時間がかかります。逆に日本語の介入が少なくなればそれだけ速く意味を掴めることになり、今までより速く読めるようになるのです。

また、話者は辞書の発音のようにすべての単語をひとつひとつはっきり発音するわけではありません。意味や構造のひとかたまりを単位に自分の言っていることを意味を取りながら喋っています。その話者の発話リズムに慣れれば、読む場合もそのリズムで理解できるようになります。

そのためには、音声をただ聞くだけでなく自分で発音してみることが大事です。自分で音を再生できる程度の長さで一旦止め発音してみます。そしてまた音声を流し適当なところで止めて発音します。それを繰り返すのです。そうしながら再生できる長さを徐々に長くしていきます。最初はスクリプトを見ながらでも良いですが、徐々に文字を外して音だけに頼るようにしましょう。そうすることで、次第にリズム感が頭に定着し、そのリズム感で読めるようになってきます。

英語圏でのニュース放送の多くはインターネットで視聴することができます。そうした放送は(会話などを除けば)大体分速150 ~ 180語くらいで話されているのが一般的です。読む速度を上げるには文字だけではなくこうした音声も利用すると良いでしょう。役に立つはずです。

それでは、またお会いしましょう。

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